幼女再び3

その日の授業が終わりハイツアライアンスに戻った1-Aの面々。座学中はずっと蛙吹の膝に乗っていたは皆に慣れてきて特にお昼ご飯を一緒に食べた蛙吹、麗日、緑谷、飯田に気を許している様子だった。元々スキンシップが好きなのだろうこの少女、気に入った相手とはくっついていたいのか今も麗日に抱き上げてもらいその首に腕を回してぴったりと身を寄せている。



「あかんカワイイ」
「いいなあ~私も抱っこしたい…」
「お茶子ちゃん、辛くなったらいつでも言ってね」
ちゃんお菓子食べる?」



女子に囲まれそれぞれの顔をじっと見つめているに耳郎がお菓子を差し出すが「ううん」と首を振った。



「つーか部屋どうすんのかな?」
「だよね ちゃんの部屋に連れてくにしても1人じゃね~?」
「お家にはちゃんのお部屋ってあるの?」
「おへやあるよ!」
「あるのか」



ということは1人で寝ているのだろうかと芦戸が首を傾げる。その横で蛙吹が寝るときはどうしているのかと尋ねた。



「おじいちゃんとねてるの」
「そうなん?」
「おとうさんたちは、いそがしいから!」
「ああ、プロヒーローだもんね」
「なるほど」



やはり寝るときは誰かと一緒の方がいいのだろうということで、の希望かなければローテーションで各部屋に行くことになりさっそく今夜の部屋を決める。懐きようからして蛙吹か麗日かと思われたのだがの口からでた名前は予想しないものだった。



「おにいさんは?」
「ん?」
「おにいさん?」
「誰?緑谷くん?飯田くん?」
「えっと、しょーたおにいさん」
「しょ… 先生か!!」
「あ~~~」



否、考えてみればそうか。朝のワンシーンを思い出して皆納得だと頷く。午前中は一緒にいたし一番最初にリラックスできた相手が相澤なので彼女が求めるのも当然である。それに加えは家で祖父やお手伝いさんなど基本大人に囲まれて生活していたのでより年の離れた相手のほうが安心できるという心理があるのだがこれはクラスの誰も知りようのない事実だ。幼い少女の望み、できることは全部叶えたいのだがしかしさすがに先生は無理だと天を仰ぐ。そんな女子陣の心情を酌んだのかがにこっと笑顔を見せた。



「おねえちゃんたちとねたい!」
「やさしッ」
「子どもに気を使わせてしまった」



結局じゃんけんで順番を決めることになり一番手は耳郎に決まり、「よろしく」と小さな頭を撫でる。



「きょんちゃん!」
「結局きょんちゃんのままか いいけど」



寮に向かいながら耳郎、芦戸、葉隠、八百万は自己紹介したのだが皆名前にちゃん付けでストレートに呼んでいるのに耳郎だけは何故か"きょーかちゃん"にならなかったのである。

部屋の話が落ち着き寝る前に、と麗日たちにお風呂に入れてもらったがご機嫌で共同スペースへ戻ってきた。ソファのところには切島と上鳴、瀬呂が座っておりその傍をちょうど同じくお風呂を済ませたらしい緑谷が通りがかるところで、彼を見つけたはぱあっと表情を明るくする。



「いずくおにいちゃん!」
「あっちゃんもお風呂入ったんだね」
「うん!きもちよかった!ねえねえ!」
「うん?」
「それオールマイト~!」



足元まで駆け寄ってきた少女の目線に合わせるようにしゃがむと肩にかけていたタオルを指して目を輝かせるので手に取って広げると、両腕できゅっと抱きしめた。その微笑ましい姿に緑谷だけでなく切島たちも頬を緩ませる。



「やっぱりちゃんもオールマイト好きなんだなあ」
「だいすき~!」
「ウッかわいい」
「えんでばーもすき!」
「意外とゴリゴリ系」



タオルを持ったままはにかむに後からついて来ていた麗日が胸を押さえて唸った。家に持って帰りたい。そんな気持ちでいっぱいだった。ふと、大好きなオールマイトを見て興奮しているのもわかるがそれにしては頬が赤すぎるのではと緑谷が疑問を抱いたとき「どけ」と低い声で言われ思わず身体を横にずらすと爆豪が立っているではないか。その手にはコップが握られておりに無言で突き出す。



「爆豪なにそれ」
「オレンジジュースじゃん」
「いれてあげたん?」
「ついでだわ」



ぽかんとしつつコップを受け取ったのを見て爆豪はさっさとその場からいなくなった。小さな口を開けて固まっていると同じ表情で緑谷が彼の背中を見送る。



「かっちゃんまじか…」
「……かっちゃん?」
「エッあっ 今のお兄ちゃんのことだよ」
「爆豪勝己ってんだぜ」
「かっちゃん」
「これもうかっちゃんで覚えちゃったんじゃね?」
「ハハ…まあ…大丈夫だろちゃんなら」



普段から相手に怒っている姿を見かけることはないし、何なら今は幼女だし。居合わせた一同は互いに顔を見合わせ頷いた。